メイドインアビス 未完 全6巻 読みたい

あらすじ・ネタバレ

甘く可愛い絵に騙されてはいけない。
ひどく残酷で切ないダークファンタジーなのだ。
ロリショタフェチでも有名な作者がこんなに魅力的な麻薬のような漫画を描くと誰が予想できたであろうか。
今の勢いのまま連載が続いたら完結した時、日本漫画界の伝説となるはず。

舞台は巨大な穴がぽっかりとあいている世界。
この穴がタイトルにもあるアビスという名前である。
この穴、潜ると潜るだけ上に戻る際に「上昇負荷」という呪いがかかるのだ。
スキューバーダイビングなどで深く潜水した際の減圧症を想像するとイメージしやすいだろう。
ダイビングと異なるのはアビスの場合、深く潜ると必ず死ぬ。
深い場所で強い呪いを受けたが最後、生きては地上へ戻って来られないのである。

この漫画は主人公リコがアビスに潜り調査する探検隊「探窟家」になる話だ。
リコの母が有名な探窟家であり、母親の背中を追うように穴に潜るのである。
共に行くのはレグという少年の姿をしたロボットだ。
幼い少年少女が手に手を取り二度と戻れぬ片道切符の旅に出るのである。
悲壮感は全くない。明るく元気に笑顔で探検するのだ。
アビスの中には不思議な動植物がいてキラキラとしたファンタジーに満ち溢れている。

そんな可愛らしい子供向けの夢が溢れるファンタジー漫画風の世界に現れるスプラッタ場面が衝撃的なのだ。
最高位の探窟家「白笛」が複数人出てくるが、特にその中でも「ボンボルド」というキャラクターのインパクトが計り知れない。
何人もの孤児を騙してアビスへ連れてきてえげつない人体実験をしていたのだ。
意識や痛みは残したまま人体を切り刻み手足を落とし箱に詰めたもの「カートリッジ」を自ら装着して呪いを肩代わりさせている描写に背筋がゾワっとする。
さらにもう一つのエピソード。
探窟家の呼び名である「白笛」とはアビスの6層へ潜る為に必要なアイテムである白い笛を持っているからその名で呼ばれるのだが、実はこの白笛の原材料は人間なのである。
そのことを知った読者はリコ達も6層へいくためには白笛が必要じゃないか！とビビるのだ。
ロボットであるレグに呪いはかからないため白笛が必要なのはリコだけなのだが、ボンボルドに「カートリッジ」にされた養女のプルシュカがリコのために白笛の元となる「命を響く石」となってくれる。

次から次へと思いもつかない面白いエピソードが散りばめられて飽きることなくページをめくってしまう。
たくさんのキャラが出てくるがどれも皆個性的でしっかりと書き分けられていて分かりやすい。
その中でも絶対に特筆すべきなのはナナチというキャラクターだ。
ナナチはボンボルドの実験の被害者で姿形が人間ではなくなっているのだ。
身体全体がふわふわの毛で被われ長いウサギ耳が生えた可愛い少女のような外見をしている。
「んなぁ〜」という口癖でレグやリコに抱きしめられたり触られたりする姿がとても愛らしく100人中97人がケモナーに目覚めるだろう。
そんなナナチにはレグもリコも興奮する。
そして我々はレグの勃起シーンを見てびっくりするのだ。

今まで感じたことのなかった自分の中の新しいフェチズムに出会える貴重な漫画である。

蛇足だが「アビス」という名のジェームズ・キャメロン監督作のSF映画がある。（原題:The Abyss　1989年）
主人公が「片道切符は覚悟の上だ」と言い深海業務に向かう印象的なシーンがある。
メイドインアビスは映画「アビス」からインスパイアされた漫画なのかもしれない。
なにはともあれ今後もぐいぐいと読者を引っ張り込みアビス中毒にさせる大穴となって欲しい。